夏の場所

今年もまた、日本でいちばん寒いシーズンに海外逃亡してしまった。2月の日本はどうでしたか。私は、海上にいました。

 

2月はほとんど船に乗っていた。その間、私たちにとっての世界は船だった。外界から遮断されて、人間と人間を邪魔するものがなくて、目の前にいる人と、環境と、問題に対峙する環境にいた。それが私たちの世界だった。33日間も一定の場所に缶詰めにされていると、今までの当たり前が当たり前ではなくなってしまうことが多々あった。普段なら家に引きこもって外に一歩も出ない日があってもおかしくなかったけれど、暇な時間を見つけたら甲板に出て海風を味わった。自分のことをもっともっと好きになった。自分が嫌いになった時は、昔はもう死にたいとかこの世に存在する意味はないとかすぐ落ち込んでいたけど、自分自身を受け入れることができた。世界中に友達ができた。地球の裏側(本当に、時差が12時間)のことでも当事者意識が芽生えた。人を信用し、信用される感覚を知った。何より、船を、海を、自然を、そして人を心の底から愛している。相手の幸せを心の底から願えるようになった。

 

何かと、自分は夏にゆかりのある人間だとふと思った。大好きな人たち、大好きな瞬間、大好きな場所に出会うのは、いつも夏だ。高校2年の夏、去年の2月のフィリピン、今年の2月の太平洋。帰りたいと思う場所にはいつも夏の記憶がついてくる。

 

それでは。