冬の味覚

 

三大欲求の中で順位をつけるとしたらやっぱり食欲が一番だ。

 

睡眠もそこそこ、いや、かなり、いや、とっても好きだけど、ここで寝たくない!って時にやってくるのが許せない。でも布団は世界一好きな場所だから、なあ。

 

 

ごはんは、味覚だけで感じるものではない、五感すべてを使って感じ、そして時には過去を思い出したり、舌の上にのっているそれにたどり着くまでの長い道のりに思いを馳せ、ゆっくり噛みしめ、胸に手を当て、目を開き、鼻から空気を大きく吸って「おいしい~~~~~~~~~~~~~~!」とありったけの表情筋を使ってため息を吐くまでが、正しいごはんの味わい方である。そのあとはちゃんとお冷を飲んで、白米とお漬物を食べ、おみおつけを飲み、ほっこりしたところでちゃんとメインディッシュと対話するのだ。

手ごわい相手もいるが、たいていの場合、お店の場合は、数ある品目の中から自分が選びに選び抜いたもの、お家の場合は、数あるレシピの中から自らの気分とやる気と予算に見合ったものなので、手ごわいよりはむしろ、自分自身を包み込み、あたたかい気持ちにさせてくれるものがほとんどである。なにせ、空腹だと(私の場合四六時中空腹だが)それがチンしたご飯で作ったお茶漬けでも、こがしすぎたトーストであっても、沸騰するちょっと手前のお湯で淹れたティーバッグの紅茶でも、なんでもおいしく感じ、サッカー日本代表の国歌斉唱の時のポーズを取り、その幸せを精一杯噛みしめたくなる衝動にかられるのだ。

 

あたたかいものは、好きだ。あたたかいご飯がなんだかんだ一番美味しいし、冬になると家のストーブの前で体育座りをして、動かない。冬は好きだ。人があたたかくなる。一人が嫌になる。鍋は美味しいし、ラーメンもおいしい。汗だくで食べる釜揚げうどんも好きだけど、手首より長いセーターを腕まくりしてこたつで食べるキムチ鍋の〆のラーメンほどおいしいものはない。夏に飲むアイスコーヒーより、暖かい店内で飲む冬のアイスコーヒーの方がおいしい。飲んだ後に外に出て、失敗した、ホットを頼むべきだった、と後悔するまでが醍醐味だ。

 

 

それでは。